19歳のときに洋菓子の世界に飛び込みました。
学校を卒業して、鉄鋼関係の会社に就職したんですけど、毎日がつまらなくてダラダラしていたんですよね。
働きながら夜にアルバイトもやっていましたから、年齢のわりには派手な遊びをして過ごしていました。でも充実感が全然ないんですよね。やりがいのある仕事に就こうとおもい会社を辞めてしまったんです。
何をやりたいわけでもないんですけど、アルバイトだけでは食べていけないし、結婚もしていましたから遊んでいる訳にもいかなかったんですよね。


アルバイト先で見た職人の世界がなんとなくいいように思えたんです。
一流のパティシェになろうと思い、この世界に入りました。
入ってみると、とにかく仕事がきつい、シェフが厳しい。見習いの間は、何もできないですから一日中卵だけをひたすら割っていました。失敗でもしようものならシェフの鉄拳が飛んでいましたね。当然見習いですから給料が安いんですよね。 このときほど「もっと勉強をやってれば・・・」と後悔したのはいうまでもありません。

でももう後戻りはできなかったのでやるしかないと頑張りました。

年数が経つにつれ店も変わってゆき、いろいろな人に出会えることができ人生の上での勉強をさせていただきました。
東京で10年、栃木で5年、その間にベルギーのヴィタメールでも仕事をさせてもらいました。


平成11年の11月に今の場所に念願の店を開くことになりました。
菓子を作れても店をはじめるとなると、何から始めるのか全然わからなかったんです。でもたくさんの先輩に来ていただき華やかなオープンを迎えることができたのです。 「お金がいくらあっても店はできない、大事に想う人が何人いてるか」これが大事だって言われたことがそのときよく分かりました。


1年2年過ぎていく中で、今後どのような店にして行けば良いか考え始めたんですよね。
思案している中、店で想わぬことに出くわしたのです。


店にたっていると、小学生ぐらいの女の子と幼稚園ぐらいの男の子が店に来てくれていたんですね。お母さんと一緒だと思っていたんですけど、二人だけみたいなので、 そこで「お伺いしましょうか?」って聞いたんです。
女の子が「シュークリームをひとつください」って。
「二人で食べるんですか?」って聞くと、女の子が「パパのお誕生日」て言ったんです。
袋に入れてお会計のときに女の子が私の手のひらに、お金を置いてくれたんです。
びっくりしました。二枚のお金がものすごく熱いんですよね。
150円。そのときは消費税分なんて言えないですよね。
落とさないように持っていたお金。片方の手で男の子の手を握りしめていた。


シュークリームを渡したときの、「ありがとう」の言葉と笑顔がシェフナカギリの店のあり方を教えてくれました。


一流の菓子を作る努力よりも、お客様が喜んでいただける菓子を作ろうと決めました。


「おいしいお菓子はよい材料を使いまじめに作る」これ以外にないと確信しています。
オーナーシェフ  中桐 基